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エビデンスのピラミッド

更新 ・ 著者 管理人 ・ 出典 PubMed(集め方と限界)下書き(監修前)

研究の作りによって、「その治療が効くか」について言えることの強さが変わります。よく使われる目安が、このピラミッドです。上ほど偶然や偏りの影響を受けにくく、下ほど受けやすいとされます。

ピラミッドは目安です。同じ段の中でも研究の質には差があり、段だけで結論は決まりません(下の「注意」)。

系統的レビュー・メタ分析ランダム化比較試験(RCT)コホート研究症例対照研究症例集積・症例報告専門家の意見・基礎研究
  1. 系統的レビュー・メタ分析:複数の研究をまとめて評価したもの。まとめた研究の質に左右される
  2. ランダム化比較試験(RCT):くじ引きで群を分け、比べたもの。偶然や偏りの影響を小さくできる
  3. コホート研究:ある集団を時間を追って観察したもの。比べはするが、群分けはくじ引きではない
  4. 症例対照研究:病気のある人とない人を、さかのぼって比べたもの
  5. 症例集積・症例報告:1例〜数例の経過の報告。比べる群がない
  6. 専門家の意見・基礎研究:経験にもとづく意見や、動物・細胞の研究。人での効果はわからない

注意

  • 段より中身:RCT でも人数が少ない・盲検ができていないなどで確かさは下がり、観察研究でも差が大きく一貫していれば確かさが上がることがあります。この考え方で証拠の確かさを4段階(高・中・低・非常に低い)で評価するのが GRADE です(Guyatt 2008)。
  • 系統的レビューは「まとめ方」:まとめた研究の質が低ければ、レビューの結論も弱くなります。ピラミッドの頂点を、他の段を見るレンズとして描く考え方もあります(Murad 2016)。
  • 鍼の研究に特有のこと:施術者と受ける人の両方を盲検にしにくい・偽鍼にも作用がありうる、などの理由で、RCT でも偽鍼との差が出にくいことがあります(論文を読むための用語と統計のきほん)。

質的研究=ピラミッドの外にある、別の問いへの答え

ピラミッドは「その治療が効くか(効果の大きさ)」を調べる研究の並びです。質的研究は、面接や観察で集めた言葉を分析し、「受けた人はどう感じたか」「何が大事だったか」「なぜ続けたか・やめたか」といった、数では表しにくい問いに答えます。効果の大きさは示しませんが、比べる試験では見えない面を補います。

鍼についても、受けた人の体験や、試験の中で偽鍼を受けた人が感じたことを、質的研究で調べてまとめた系統的レビューがあります(下の出典3・4)。

個人差の大きい施術を、比べる試験でどう調べるか

鍼は、施術者がその場で体を診てツボや刺激を変えることが多く、受ける人の反応も一人ひとり違います。比べる試験で調べるときには、この点をどう扱うかが議論されてきました。

  • 手順を決めるか、施術者に任せるか:全員に同じツボと手順で行う試験(標準化)と、施術者が一人ひとりに合わせて決める試験(個別化)があります。前者は再現しやすく、後者は実際の臨床に近くなります。
  • 確かめたいのは「仕組み」か「現場での役立ち」か:理想的な条件で作用を確かめる試験(説明的)と、ふだんの臨床に近い条件で役立つかを確かめる試験(実用的)の間のどこに置くかを、設計の段階で点検する道具があります(PRECIS-2・出典5)。
  • 施術者の経験:鍼の試験の報告のしかたの指針 STRICTA は、報告すべき項目の1つに「施術者の経歴」を挙げています(出典6)。誰が施術したか(資格・経験の長さなど)は、結果を読むときの材料になります。
  • 「特異的な作用」と「付随する作用」:鍼のような複雑な介入では、ツボに刺すこと自体の作用と、施術者とのやりとり・診察・期待など付随する作用を切り分けにくい、という論点があります(出典7)。偽鍼との差が小さく出る理由の1つとして論じられます。

どの作りが正しい、というより、問いに合った作りかどうかを見て読むのが大事です。

症例報告をどう読むか

症例報告は、比べる群がないため、「その治療が効いた」とは言えません。自然に良くなった・ほかの治療が効いた・たまたま、を区別できないからです。

一方で、症例報告には次の役割があります。

  • まれな有害事象(気胸・感染など)を知らせる
  • 新しいやり方や、珍しい症状への試みを伝える=臨床家としての引き出しを広げる
  • 次に比べる研究を行うきっかけ(仮説)になる

このサイトでは、症例報告に症例報告の札を付け、エビデンスとしての強さが低いことを添えて載せています。

このサイトの札

レビュー 系統的レビュー・メタ分析 RCT ランダム化比較試験 症例報告 1例〜数例の報告

出典

  1. Murad MH, Asi N, Alsawas M, Alahdab F. New evidence pyramid. Evid Based Med. 2016. PMID 27339128
  2. Guyatt GH, Oxman AD, Vist GE, et al. GRADE: an emerging consensus on rating quality of evidence and strength of recommendations. BMJ. 2008. PMID 18436948
  3. Participants experiences regarding the use of acupuncture as a treatment modality: A qualitative systematic review. Complement Ther Clin Pract. 2024. PMID 38852530
  4. Non-specific effects of acupuncture and sham acupuncture in clinical trials from the patient's perspective: a systematic review of qualitative studies. Acupunct Med. 2021. PMID 32375500
  5. Loudon K, Treweek S, et al. The PRECIS-2 tool: designing trials that are fit for purpose. BMJ. 2015. PMID 25956159
  6. MacPherson H, Altman DG, et al. Revised STandards for Reporting Interventions in Clinical Trials of Acupuncture (STRICTA): extending the CONSORT statement. PLoS Med. 2010. PMID 20543992
  7. Paterson C, Dieppe P. Characteristic and incidental (placebo) effects in complex interventions such as acupuncture. BMJ. 2005. PMID 15905259